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東京家庭裁判所 昭和38年(家)8335号 審判 1964年2月14日

本籍 東京都世田谷区 住所 東京都杉並区

申立人 小林直(仮名) 外一名

右両名法定代理人親権者母 小林友子(仮名)

主文

申立人らの氏「小林」をいずれも父の氏「井原」に変更することを許可する。

理由

申立人小林直、操は、日本の国籍を有する小林友子を母とし、アメリカの国籍を有する井原正を父として、前者は昭和三三年一月一一日に、後者は同三六年六月一三日いずれも東京で出生したが、父と母とが婚姻関係にないため、非嫡の子として母の氏小林を称して今日に至つている。この間父井原正は、申立人ら及び右友子と共同生活を続けており、昭和三八年八月一二日には申立人らを認知したが、申立人らとは氏を異にする関係上、申立人らの成長に伴い生活上種々支障を来たすに至り、ここに申立人らの氏を母の氏である小林から父の氏である井原に変更すべく、本件申立に及んだのである。

以上は、当裁判所の取調べにより知りえた本件申立の趣旨と実情である。

ところで本件は、申立人らの父がアメリカ人であるところから、問題は存するが結局この申立を許容すべきものと考える。蓋し、本件の如き親子間の氏変更の問題は、法例第二二条に準じて当事者即ち申立人らの本国法である日本法に準拠してその当否を決すべきものである以上、右の如き事情に鑑みれば日本民法第七九一条によつてこれを許可すべきは明白であるからである。そしてたとい申立人らにとつて、戸籍法上この許可による新しい氏井原を公示する道に欠けるところがあるとしても(ただ申立人らの戸籍の身分事項欄に本件許可の審判があつた旨を記載することも一考であろう)、それは戸籍法上の技術的問題にすぎず、これによつて本来民法によつては許される筈の氏の変更を認め得ないとする如きは、本末転倒であるといわなければならない。(ちなみに、申立人らの父井原正の本国法であるカリフオルニア州法によれば、民法七九一条に相当する如き規定は見出し得ないが、一般的な氏変更(change of names)に関する規定が存し、右の如き事由によるものも当然含まれると解せられる。)

よつて、申立人らの本件申立を許容すべきものとし、主文のとおり審判する。

(家事裁判官 高野耕一)

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